十三月雑感

さてたとえば
かぐや姫の棲むという
月下に美人咲き乱れ
嫦娥の仙薬月にあり
やれ玉兎波の上
駆け駆けてたどりついたは月の上
祝いの餅を突きたてまつる

さてたとえば
灰色のビルの谷間の紺碧の
空のみぎわの白い月
細い二日の白い月
満ちゆけば
都会の上には赤い月
ネオンの上の赤い月
空にあかがねぽっかりと 

さてたとえば
肩落とし とぼとぼ歩む山道で
みかん畑に月のよな
まあるいみかんのぽっかりと
夜の夜中に歩みつつ
懐中電灯消してみて
みかん畑に月の影
あかるいあかるい月の影

さてたとえば
花札のぼうずの札にはすすきの原
袴垂には芳年の むらくもの月天上に
タローの月には不安げに
ゆらりとゆれる水の月
千々にものこそかなしけれ

さてまた満ちれば
月も朧に東山
桜の上にあわあわと
山の端いずくと武蔵野に
すすきの上にきっぱりと
花かざり 芋そなえ
はてまたうれしや月の酔い

 

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