元和6年5月17日 伊達政宗書状

きっと飛札をもって申し候。このたび江戸ご普請望み候てつかまつり候条、我らあい詰め候て申し付くべき義、本意に候えども、御暇仰出され、是非なく下国。しかる間、来月末時分、ご普請見回りにふと江(江戸)へ参府しむるべきのよし、大炊殿へ内々物語申し候ところ、このたび下向の跡にて、しかるべき御次候て、立たれ御耳候えば、存じ寄り候通りにご満足に思し召され候えども、我ら上り候ば、御暇の面々各また参府なるべくの条、必ず必ず無用のよし、大炊殿より堅く申し来り候。しかる上は、名代なりと相上り申したく候。ご大義ながら、早々仕度候て、御上り満足なるべく候。なお委細の義、志摩・大学とことより申すべく候。恐々謹言
雨天の時分、別してご大義に存じ候えども、公儀ご普請に親類衆一人も付け置き申さず候えば、外実ともにしかるべからず候間、このごとくに候。おなじくは今月末に江戸へご参着候ように申したく候。以上。
(元和6年)5月17日 政宗 (花押)
伊達房州 御宿所

急ぎ飛札をもって申す。今度江戸のご普請望んでいたところ、私も江戸に留まって指示を出そうと思っていたのだが、国へ帰るよう仰せられたので仕方なく帰国することにした。それで来月末にご普請の見回りにふと江戸へ参府しようかと、大炊殿に内々で相談したところ、このたびの帰国のあと、しかるべき御次があって参府なされたなら、お察しのとおりご満足に思し召されるだろう。しかし私が参府したなら、帰国中の諸大名もまた参府するだろうから、必ず必ず無用に願いたいと、大炊殿から堅く言って来た。この上は名代なりとも江戸に上らせたいと思う。ご大義ながら早々お仕度あって、お上りになれば満足に思う。なお、詳しいことは志摩と大学に伝えさせる。恐々謹言。

追伸 梅雨時にわざわざご大義なことに思うけれども、公儀のご普請に親類衆の一人も付け置かぬでは面目がたたないので、このとおりだ。同じくは今月末に江戸へご参着あるようお願いする。以上。

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