年未詳1月6日伊達成実書状

俄ニ市左衛門、平兵衛ヲ申付候処ニ尤之由申候哉。満足ニ候。今朝◾️五郎殿御越候而もく枩前ニ鷹可有之難計候間、無御座ハハ、無是非候御座候ハハ一居も二居も望之由申候ハハ、左様ハハ越可申由承候。昨日之状ニハ一二ハ御座候と被遊候。鷹匠ニ二郎左衛門承候ヘハ、若鷹五、山帰五十計ハ御座候。霜月此方へ上候者之申候ハ専鷹出候間、可有之由申候由、二郎左衛門尉被申候。人下申候ニつる前ニ為知可申候由、承候間左右次第ニ市左衛門ハ可越候萬申合候為ニ候間左右申上候翌日、此方へ可参候由可申候。今ハ舟無之候間、上下遅候事、難計候。鷹さへ候ハハ、則為上可申候由被仰候。恐々謹言
正月六日 成実
志賀備後殿

尚々市左衛門ニ出候小袖越候、可相渡候平兵衛代物壱貫五百文かり度由申候。市左衛門ニ二切出候間平兵衛ニハ一貫文出可然候。其ハかしハ不申候。出可申候孫衛門ニ右之通申候而可相渡候。内々ニ能存候者ニ、枩前而金ヲ少出能鷹、惣別鷹之様子聞候而請取候様ニと可被申候此方へ参り候ハバ、其分可申候へ共、若失念難計候へば、間先申越候。今度下候者なとに申合可然候哉。相模といぢにて候間如何様ニも鷹為上申度候山帰若鷹ニ三為登度候。以上、又申候。人足之事ハ登ニ餌なとかい申候為ニ可入候哉。左右了庵者参候と申候も実儀無之候間、登ハ両人計と存候而、人足之儀積可然候。
以上。

てきとう読みくだし

にわかに市左衛門、平兵衛を申しつけ候ところにもっとものよし、申し候や。満足に候。今朝■五郎殿御越候て、枩前に鷹これあるべくはかり難く候間、御座無はば、是非なく候。御座候はば、一居もニ居も望のよし申し候はば、左様はば申し越すべきよし承り候。昨日の状には、一二は御座候と遊ばされ候。鷹匠に二郎左衛門承り候へば、若鷹五、山帰五十ばかりは御座候。霜月此方へ上げ候者の申し候は、もっぱら鷹出候間、これあるべくよし申し候よし、二郎左衛門尉申し候。人下し申し候つる前に知らせ申すべき候よし、承り候間、左右次第に市左衛門は越すべく候。よろず申合候為に候間、左右申し上げ候翌日、此方へ参り候よし申すべく候。今は舟これなく候間、上下遅く候こと、はかり難く候。鷹さえ候はば、すなわち上げさせ申すべく候よし仰せられ候。恐々謹言。
正月六日 成実
志賀備後殿

なおなお、市左衛門に出候小袖越候。相渡すべく候。平兵衛代物一貫五百文借りたきよし申し候。市左衛門に二切出し候間、平兵衛には一貫文出ししかるべく候。其は貸しは申さず候。出し申すべく候。孫右衛門に右のとおり申し候て、相渡すべく候。内々によく存じ候者に、枩前て金を少し出し能鷹、惣別鷹の様子聞き候て請け取り候ようにと申さるべく、此方へ参り候はば、その分申し候えども、もし失念はかり難く候えば、間先ず申し越し候。今度下候者などに申し合いしかるべく候や。相模といぢにて候間、如何様にも鷹上げさせ申したく候。山帰若鷹、二三登させたく候。以上。また申し候。人足のことは登に餌などかい申し候ために入るべく候や。左右了庵は参り候と申し候も実儀これなく候間、登は両人ばかりと存じ候て、人足の儀つもりしかるべく候。以上。

てきとう意訳

急に市左衛門と平兵衛を申し付けたところ、了解とのこと、満足している。
今朝、■五郎殿がお越しになって
「松前に鷹があるかわからないので、なければ仕方がない。もしもあったら、一居でも二居でも望んでいるとのことなので、それならば申し越すように」
とのことを承った。昨日の御手紙には、一居か二居はあるとあった。
鷹匠に二郎左衛門が承ったところ、若鷹が五、山帰が五十ばかりはあるとのこと。11月に此方へ上げた者のいうには、もっぱら鷹が出ているので、そのようことであろうとのことだと、二郎左衛門は申している。
人を下す前に知らせるようにと承ったので、連絡あり次第に市左衛門は来るように。いろいろ申し合わせているので、連絡を申し上げた翌日、此方へ参るよう申すように。
今は舟がないので、行き来が遅いことは推測しがたい。鷹さえいたならば、すぐに上げるよう仰せだ。恐々謹言。

正月六日 成実

志賀備後殿

なおなお、市左衛門に出した小袖がきたので渡すように。平兵衛が代金一貫五百文​を借りたいと申してきた。市左衛門に二切出したので、平兵衛には一貫文出すのがよいだろう。それは貸すのではない。出すように。孫右衛門に右のとおり申して、渡すように。
内々によく知っている者に、松前で金を少しだし、よい鷹、また鷹の様子を聞いて受け取るよう申されるように。此方へ備後が参ったならそのことを申すのだが、もしも失念したらいけないので、まず書いた次第だ。今度下す者に打合せてほしい。
相模と意地になっているので、どうにか鷹を上げさせたい。山帰若鷹をニ三、上させたい。以上。
また追伸。人足のことは上りに餌など飼うために入るだろうか。左右了庵は参ると申していたが、そうではない。上りは両人ばかりと考えて、人足の儀はそのつもりでいるように。以上。

「成実と書簡」へ戻る Page Top