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前夜

ひゅん、と風を切る。
左の手で太刀を持ち、右を添える。
何度か太刀を振るうと、右腕の引き攣れがぴりりと痛んだ。
明日か明後日には天気が崩れそうだ。

政宗が猪苗代城に入ったのは深更だった。
兵に飯と休息をとらせ、政宗自身も部屋に入った。
わずかでも眠る方がいいのはわかってはいるが、どうにも落ち着かない。
成実は太刀を振るって気を紛らわし、月が沈んだ空を見上げて大きな息を吐いた。
袋の鼠を覚悟した昨晩の緊張は去った。気がゆるんだか。否、と成実は首を振る。
猪苗代城を埋めつくしている伊達勢は仙道を空にして集結したのだ。背水の陣に変わりはない。
そこまでの危険を侵して政宗自らが猪苗代にいる成実と小十郎の救援に入ったのは、股肱の臣を助けるためだけではもちろんない。
星がまたたく空を見上げた視線を地に落とせば、風にざわめく森の闇の向こうに、しんと静まりかえった黒い湖がある。猪苗代湖だ。
あの向こうに会津守護芦名の居城黒川がある。
その黒川に向かってもう一度、太刀を抜く。大きく左半身に、頭上に太刀を構える。
「申し上げます」
小姓が傍らにかしこまって言上の体、その後ろにいるのは政宗の小姓だ。
「何事だ」
動きを止めず、振り下ろし、すりあげる。切先の先には黒川がある。
「お屋形さまがお召しでございます」
おう、と太刀を鞘におさめる
「すぐに参る、と申し上げよ」


猪苗代城の奥、政宗の宿所となった部屋に行くと、主は小具足を外し、下帯に帷子を引っ掛けた姿で座っていた。
無造作に組んだ足のすぐ横に、太刀が鞘ながら置かれて、ああ政宗も自分と同じことをしていたのだとしれた。
「来たか」
と声がかかり、成実は政宗の座から一間ほど下がったところで礼をとった。
「お前に」
「気が昂ぶって眠れぬ。鎮めろ」
政宗が立ち上がり、半間まで間を詰める。間近に見上げたその身体は手足のすみずみまで張りつめ匂いたっていた。
「……会津だ、五郎」
「御意」
成実もまた歯の奥を噛みしめ血の滾りを抑えこむ。抑えこんでも抑えきれぬ滾りが身体中をめぐり局所にも流れこんでゆく。
ふーっ、と荒い息を政宗が耳元で吐いた。
「今宵は、お前でなければならぬ」
憧憬の会津が、この切所の先にある。
胸が高鳴る。噛む。つかむ。
身体を重ねて、ただ吼えた。
――会津だ。

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