天正15年5月9日 伊達政宗書状

これより、書札をもって申し述べべきと存じ、飛脚まで申つけ候砌、来札に預り候。つぶさに披見せしめ候。よって南筋唱えの儀、あらまし今般承り候。祝着の至りに候。もっとも万々油断なき世間に候。また南方小田原の要氏、もっとも佐竹洞中の義、近日こまかに申し来たり候。この説に限らず、種々様々の唱えども、横目をもって度々この口へ承り候。しかしながら、そこもとへ申し来る義、いく度も告げ承るべく候。
一 世上如何様の計策候とも、御覚悟第一に候
一 安子島はじめとして、境目の衆へ懇切あるべからず候こと。
一 宮森に白石差し置き候上、よろず談合もって境中の義、御相談、また御入魂、勿論のこと。
一 玉井・本宮かかえのこと、3000騎・4000騎の適かかえらるべきほどの心がけをもって、連々不振のこと。
一 そこもと上下据付けまじく候間、今来年とりわけて土民・百姓等に憐憫を加えらること。
一 申すまでもなく候えども、矢・鉄砲、もっとも玉薬あまた御支度のこと。
一 近習の衆、その下々、惣別、家中の衆、述壊なきようの御分別、もっとものこと。
一 高玉近江守、もっともこれも大境の要害に据置き候間、ふだん御入魂しかるべきのこと。
一 世間、雑意等申し廻ること候とも、動転あるまじく候。また片時も御油断あるべからざること。
一 田村衆へ残りなく、まずもって入魂しかるねく候。その上、おのおの存分相見え候べきかと存じ候。
一 こまかに申すこと、いかがに候えども、いかようにも候て、境々へ入れ置かるべき俵物、もっぱらに御支度のこと。
以前より腹蔵なく互いに申し承ることに候間、かくの如くに候。かの書中、すなわち火中。返す返す、恐々謹言。

追啓、この口より出馬のよし、申し来たり候か。毛頭□のことに候。向後も、左様の始末候わば隔意なく談合、□□心安かるべく存じ候。以上

5月9日  政宗 花押

五郎殿

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