朝鮮の梅 その2

 ちんまりと染付けの鉢に挿された梅には、枝一つなく――いや、一本の枝を挿してあるだけ。小さな葉がそこからしょぼりと出ている。挿し木なのだから当たり前といえばそうなのだが、あまりに頼りなく成実には見える。
政宗は、といえばこの鉢を閑所に置いて毎日愛でているとのこと。登城している間に、小姓たちが水を遣り、日をあて、丹精している。高麗で見た日のように、見事な花を咲かせる様子を想像するだに楽しいのだそうだ。
成実は自分の心配を口に出した。
「そのように愛でる気持ちはよくわかるが、枯れるということはなかろうか」
「大丈夫だ」
と政宗は自信たっぷりに言う。
「わが伊達家の庭師は優秀だからな」
自慢げに言った政宗は、成実を手招き、裏庭へ伴った。
そこに並んだ鉢を見て、成実は呆然とした。
二十本はあるだろうか。素焼きの鉢に挿された、梅、梅、梅……。
「これだけあれば幾つか育つだろう」
政宗はあっさりとそう言った。
これだけ枝を落されては、元の古木はどうなったのだろう。成実はそっと息を落した。 Page Top