朝鮮の梅 その3

「大丈夫だ。桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿、と言うだろう」
確かに政宗の言うとおりなのだが、伏見に無事着いただけであれだけあるということは、高麗で一体何本挿したことやら。
成実の指摘どおり、輸送途中に蒸れてしまったり、潮をかぶったり、またひっくり返ったりしてだめになったものも少なくはない、と政宗は認めた。
「そういう五郎とて、持ち帰ったものがあるというではないか」
「聞こえてござったか」
成実の持ち帰ったものは竹である。根を地掘り苗の形にし、適度に湿らせた布袋に入れて持ち帰る。枝を持ち帰るような苦労はない。
「竹も悪くはないが、広がりすぎて情趣に欠けはしないか」
政宗がいたづらな笑顔で問う。
「我が家ゆかりの草木だぞ」
と成実は肩をいからせた。
それに、と続ける。
「高麗の竹林には虎が住むそうな。いかにも勇武の家にふさわしかろうが。また矢竹にもなり、矢来となり、槍となり、筒となり、樋となり、籠や器となり、しかも竹の子は食える……」
実用をとうとうと並べ立てるあたりが、いかにも成実らしい、と政宗は苦笑した。 Page Top