「あの、お伺いしてもよろしゅうございましょうか」
遠慮がちに聞いたのは、二人の会話をそばでひっそり聞いていた左門だった。
「おうとも」
政宗と成実が頷くと、左門は質問を続けた。
「お二方とも、庭師をはるばる高麗まで、わざわざお連れになったのですか?」
「…………」
しばしの沈黙のあと、政宗と成実は、そんなことはない、と力説を始めた。
「太閤殿下は大の普請好きゆえ、彼の地でも普請があるであろうと、黒鍬者を召し連れたのだ。堀を割り、石を積む黒鍬の仕事は、庭の作事にも通じよう。また城といえば庭はつきものじゃ。黒鍬者も庭の経験は豊富で不思議はなかろうが――」
ややくどくどしい二人の話を要約すると、土木工事の専門家を連れて行き、ついでに梅や竹を持ち帰ったのだ、ということらしい。でも、どうも実は逆――庭師に黒鍬の仕事をさせたのではないか、と左門は思う。確かに作業はかなり共通だし――。
結局、と左門は結論づけた。
――事実はともかくお二方とも大の園芸好きなんだ。
しかし、その左門の父・片倉小十郎がひそかに松を持ち帰り、図らずも松竹梅が揃って、留守居の綱元を呆れさせていたことは、さすがの左門にも想像の外だった。