雪の日

資福寺の本堂で、一人、座禅する。

昼過ぎから降りだした雪は、夜になって本降りになった。

静かだ、と政宗は心につぶやいた。

しん、と雪が降る。
しんしんと、雪が降る。

裏山にすむ狼の声さえ聞こえそうだ。

 

小十郎、

と呼びかけて、口を閉じた。

見回した堂の中には誰もいない。
人払いしたことを思い出す。


戸を開けて、縁で座禅を組みなおした。

きん、とした冷気。

思うことは限りない。
俺は本当に伊達家をついでやっていけるのか?

思いに沈む。雪がそれを塗りこめる。



さく。


かすかな、かすかな音。

さく、さく。

さく、さく。さく。  さく。

しっかりと、足取りが近づいてくる。

蓑傘の中から、雪焼けした顔が笑った。

「……成実!」

「ああ、雪まみれになっちまった。もう板屋を越えるのは無理だな」

雪を払いながらいう成実は、供も連れていない。

「城のものはなにをしている。先触れも出さぬとは」

暗に咎めるが、この従兄弟は意に介さない。

「出したさ。だが俺の方が早かった」

なにしに来た、と問うと、瓢箪を取り出し、

よい酒が手に入ったんだ、ともう一度笑う。

「まさかそれだけのために大森からきたのか?」

「そんなわけがあるものか」

真顔でいった次の瞬間には、縁に座っている、

図々しさがなぜか心地よい。

「雪見で一杯やるのも、たまにはいいものさ」

杯に受ける。飲み干す。冷やりとしたものが、すぐに熱く鼓動をはじめる。

表に城のものたちが到着する気配がした。
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