一 弾正所存には、不慮の儀をもって譜代の主君に相背き、伊達に御奉公仕り候事、天道も恐ろしく存じ、流石に主君の御子正三郎殿を、某引き連れ政宗公へ参り、傍輩に成り奉るべき事、天道も口惜しく思し召し、仏神三宝にも放され奉るべき事を感じて、中新田の御留守居南條下総所まで、正三郎殿を送り奉り候。二人の御方は義隆にも正三郎殿にも放され候て、明け暮れの御嘆き御自害を思し召すも、さすが左様にもならず、御涙のみにて候。
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