朝鮮の梅 その1

 政宗が高麗から梅を持ち帰ったと聞いた成実は、いそいそと政宗の元へ向かった。
高麗での伊達勢は、多いとはいえない人数だったのだが、いつの間に政宗がそんなことをしていたのか、とんと気づかなかった。
政宗は風雅を愛する人物である。文物を見る目は一流と、みやこびとの評判も高い。その政宗が持ち帰った梅なのだから、さぞや見事なものであろう。
成実がそのことを問うと、書き物をしていた政宗は相好を崩した。無事持ち帰れたのが相当嬉しいらしい。
「いや、彼の地のさる港でな。潮風に吹かれつつも凛と花を咲かせる、古木のありさまがあまりに見事でな」
持ち帰ったのだ、と自慢げに話す。ぜひ見せてほしい、と乞うと、
「おう、よいとも。そこで待て」
と、政宗が向かったのは閑所の中。てっきり庭植えにしたあるのだと思っていた成実は、意外な気持ちで政宗が出てくるのを待った。
「しかしそのような古木、いかようにしてお持ち帰りに?」
扉越しに成実が問うと、うむ、と頷きながら政宗が出てきた。
「挿し木に決まっておろう」
政宗の手には、一尺ほどの梅が、鉢に挿されて乗っていた。 Page Top