一、新沼に籠城候衆、5000に及び候間、新沼小地にて食べ物もこれ無く、餓死に及ぶ体に候。政宗公内々御人数をも遣わされ引き出されてく思し召し候えども、仙道御気遣いにて、さようにもなされず候。新沼の衆申し候は、 「師山を押し通り、向かう敵を切り払い、松山へ引き除くべき」 よし申し候ところ、深谷月鑑申され候は、 「桑折・師山両地除口狭く候。さように候とも。地形よく候はば、苦しからず候。大河を越し候みぎり、双方より仕懸候はば、手も取らず犬死につかまつるべく候間、まず様子を見合わされしかるべき」 よし申さるにつき、あい止め候。
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